さよならを泣かさないように
(4期終了後。何度目かのお別れ)
*
今回はちょっと長くいすぎてしまったような気がする。
「……やっぱ、ダメだよなぁ」
『クリィ……』
ついつい夜遅くまでデュエルに明け暮れてしまった。これが最後だ、と思ったからかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
肩のハネクリボーが悲しそうな声をあげる。
「ごめんな。でも、最初から決めてたことだろう」
ひょっこり再会したヨハンがアパートに住み着いて一ヶ月。
どこで何をしてるのかもよくわからなかったけれど、ヨハンとすごした一ヶ月は決して悪くはなかった。
朝ご飯を食べてお互いに出かけて、夕飯の頃には帰ってきて一緒に夕飯を食べる。それから、飽きることなくデュエルの話をしたり、プロリーグ観戦にも行ったっけ。あのときにはカイザーに世話になったな。
誰かと深く関わることができない俺にとって、俺の事情を知ってそれでも一緒にいようとしてくれるヨハンの存在はありがたかったけど。
でも、あまり長い間いっしょにいるのは避けたかった。
もとから俺は一箇所に長くは留まれなかったし、誰かと長く一緒にいるわけにもいかなかった。
「でも、泣かせるかなぁ」
いつか、こいつ『十代が黙っていなくなったら、俺泣いちゃうぜ』なんて言ってたんだよな。男がそんなことで泣くなよ、って思うんだけど。
それでも、冗談でも泣かせるわけにはいかないよな。
「それに、結局また会いそうなんだよな」
だから、『とりあえずさよなら』ってことだ。
こっそりまとめていた荷物を取り出す。
アパートの名義は勝手にヨハンに変えてるし、今月分の家賃はもう大家さんに渡しているから、今のうちはヨハンに迷惑はかからないだろう。
「じゃあ、またな。ヨハン」
こいつを泣かさないように。それから、俺も泣かさないように。
まるで明日も普通に挨拶を交わせるような軽さで、見ていないだろうに手まで振って、俺は部屋をあとにする。
「俺、泣いちゃうって言ったじゃんか」
そんな呟きが聞こえてきたけど、聞かないふりをした。
*
(081006)