濡らそうとも凍えさせまい
(4期終了後)
*
夜の冷えた空気を刺すように降る雨は、薄明かりに照らされた舗道を銀色に染めている。
雨に濡れながら歩く俺の髪からはぱたぱたと水滴が落ちて、地面の銀色に溶けていく。
そろそろ夜が明ける頃らしい。厚い雲なりに明るくなってきている気がする。
寒い。
でもたぶん、もっと寒い思いをしているヤツが目指す先にいる。
雨が小降りになってきたころ、ようやく見覚えのある背中を見つけた。
『ちょっと出かけてくる』
と、言って部屋を出て行ったのが、30分ほど前。
たぶん、道に迷ってここにたどり着いたのはほんの数分前なのだろう。
俺よりずっと方向音痴のくせに、デッキは部屋のテーブルの上に置き去りだったのは、迷子になってでも一人になりたかったから。
――それと、俺に追いかけてもらいたいのだ。
「また、夜明けの虹を探しに来たのか?」
背中越しに声をかけると、そいつの肩がわずかに揺れた。どうせ俺が追いかけてくることはわかっているのだから、振り向くこともない。
「まあ、な」
声がかすかに震えている。ああ、やっぱり。
夜明けの虹を探しに行くと言ったとき、こいつはいつも泣きたいから、ひとりになるのだ。
人には泣けというくせに。さらけ出せと言うくせに。
そのくせ、俺には一番弱い部分を自分から見せようとはしないのだ。
こうして、追ってくるように仕向けることはするくせに。
「たぶん、見られると思うぜ」
もう、雨が上がる。そして、日が昇る。
「そうかな」
「そうだよ。ヨハン、見たかったんだろ?」
何で泣きたいのかなんて、俺にはわからない。俺はヨハンじゃないから、ヨハンの本当のところなんて何一つわからないけれど。
でも。
「十代? ……濡れるぞ」
「どうせ濡れてる」
出会った頃と変わらない、少しだけ高い背中へと抱きついてみる。
少しだけ背伸びをして、肩に腕を絡めて。
「濡れるけど、凍えるってことはないだろ?」
絡めた腕をほどいて、こちらを向かない顔を無理矢理向けてやる。
「いっ、十代、首痛えんだけどっ!」
「こっちは足の裏が痛いんだぜー」
日が射してきた逆光でヨハンの顔は見えなかったから、泣いているかどうかなんてわからなかったけれど、構わず口づけてやる。
「……今度はちゃんとそっち向くからさ」
「ん? ……っ」
解放したとたんに、くるりと身を翻したヨハンに抱きすくめられて、同じようにキスされた。
薄目を開けて見たヨハンの肩越しの空に虹が架かっていることをヨハンに教えるべきかちょっと考えたけど、
「……よそ見すんなって」
不本意そうなヨハンの声に応えて、やっぱり教えてやるのはやめようと、目を閉じた。
*
最初は普通に十代を泣かせる予定でした。
が、一行目書いたとたんにこれはヨハンだろと思ってヨハンになりました。
中の人が演じていた某キャラ好き過ぎですよ自分…。(081014)