該当者なし
(4期終了後)
*
それを見つけたのは、ただの偶然だった。
「なんだこれ?」
横文字だけれど英語とはちがう新聞を読みながら、コーヒーをすすっていたヨハンが素っ頓狂な声をあげた。
「どうした?」
ついでに、新聞は昨日もらってきた古いモノだ。しかも、花だか野菜だかを包んで貰った新聞紙だから、いつのものかもわからない。リサイクルに出そうと思っていたそれをいつのまにひっぱりだしてきたのやら。
「これこれ」
ひょい、と差し出された新聞紙の小さな記事。それは、人を探す記事だった。
あいにくと、俺は言葉はわかっても文字はよくわからない単語が多い。
「……十代、無精しないで読めるようになれよ」
俺の瞳の色が左右違う色に変わるのを見逃さないヨハン。
「いいだろ、おまえしかいないし」
呆れるヨハンを一瞥して、書かれていた内容に目を通す。
――精霊が見えるといった、ふたつの目の色のおにいちゃんをさがしています。
――お手紙をありがとうと、いいたいです。
……一瞬で、瞳の色を戻す。
呆れていたヨハンの顔は苦笑に変わっていた。
「だから言っただろ。無精するなって」
「……ああ」
日付を見たら、2年も前の新聞だった。あのころは、まだこの国に来て日が浅くて、サングラスをかけてユベルに翻訳を頼んでいたんだった。そういえばサングラス似合わないって笑った子供だった気がするぞ、この投書をしたの。
「こんなファンタジーな依頼、よく載せたなぁ」
「何いってんだよ。クリスマスになったらサンタあての投書が載るぜ?」
「マジか?」
「たまにな」
とりあえず、該当者なしになってしまった尋ね人がいまだ捜されていないことを祈りつつ、新聞を他の新聞と一緒にまとめて紐で結ぶ。
「ヨハン、字を教えてくれ」
「おう、いいぜ」
で、尋ね人欄でサンタを捜す記事を自分の目で読んでやるさ。
*
(081021)