歩くのにいるのは、たぶん脚じゃないんだよ
(キスお題のあまり続いてない続きの、ちょっとあとの続き
事後注意(本番いけませんでしたorz))
*
「……歩けねぇ、っていうか、起き上がれねぇ」
ふっかふかのベッドの上で柔らかな羽布団にくるまって、俺は感覚のない下半身に力を入れようとして、やっぱり諦める。
「……悪い」
諸悪の根源は、本当にすまなそうに頭をぽりぽりとかいている。「あー」とか「うー」とか言葉を探してはいるけれど、見つけられないというのが正直なところなのだろう。……まぁ、それは俺もなんだけれど。
戻れない道への旅路は、まずはレッド寮からブルー寮への道のりから始まった。
さすがに、レッド寮ではベッドの狭い天井に頭をぶつけてしまって気が削がれる、と妙な気分のままに手をひいて連れ出された。
『ヨハン、手ぇ離せよ』
誰かに見られたら、なんだか恥ずかしいぞ。
『大丈夫だ。俺が誰も見ないと言えば、誰も見ない!』
『わけわかんねぇぞ!』
言ってることはわけがわからなくても、ヨハンはそうとう舞い上がっていたらしい。俺も、わけがわからないと言いながらもふわふわと、ヨハンの手を離すと飛んでいきそうだとか、やっぱりわけがわからなかった。
奇跡的に誰にも会わずにブルー寮にたどり着いて、やっぱり誰に会うこともなくヨハンの部屋に押し込まれた。
……なんなんだ、今日のこの島、俺たち以外誰もいないんじゃないか?
二人でくっついて眠るベッドにダイブさせられて、キスをされたことは覚えている。
食われそうだな、と思うキスが延々と続いて。キスがからだじゅうに降りてきて。たまに吸い付かれて。それから。
『逃げるなよ?』
と、なぜか膝小僧にキスが降りてきた。そのキスがどんどん上にいって……それから……。
「うわあああああああああああああっ!」
思わず大声で叫んで羽布団を頭から被る。
「どうした、十代!?」
俺の突然の絶叫にヨハンがぎょっとして布団を剥ごうとするから、必死にガードした。
俺、絶対やばい顔してる……!
俺のガードの意味を理解したのか、ヨハンの手が羽布団ごしに頭をぽんぽんと叩いてくる。
「……お前ひとりばっかりずるいぞ。俺だって、叫んで布団被りたい」
そして、布団ごとぎゅっと抱きしめられる。
膝小僧にキスをされた瞬間から、俺はばたつかせていた脚を動かすことができなくなった。だから、なにも出来ずにヨハンのやりたいようにいろいろとされてしまったのだ。
でも。
「やってるときもさ、本当は叫びたかったんだよ。情けないだろ」
何を叫んで良いのかわかんなかったけど、とヨハンの腕の力が強くなる。
「だから、キスしちまってた」
今の俺なら、闇のデュエルで感じた痛みなんて蚊に刺されたくらいにしか感じないだろうってくらいの痛みに何もかもかなぐり捨てて叫びたいと思ったけれど、唇をふさがれて舌を絡め取られてしまって、何もできなかった。
持ち上げられた脚は動かないままで、やっぱり何もできなくて。
できたことといえば、ヨハンの肩にしがみついてたくらいだ。
お互い息もできなくて鼻呼吸するしかないから、妙にこそばゆかったはずなのにそれどころじゃなかった。
ただ、キスでどろどろに溶けていくような感覚。
俺たちが見つけ出す答えにたどり着くまで、歩き出すために必要なのは、使い物にならなくなった脚ではなかったのだけはわかった。
「はっきりわかったこともあったけど、ますますわかんないこともできた」
布団をはがされて、だいぶ顔色の落ち着いた顔を見られる。
「なんだよ。あれだけして何がわからないってんだよ」
キスされ続けて、嫌だって言うタイミングさえ逃したんだぞ。
ヨハンは何も言わずに、キスをひとつ、落としてくる。ふわふわと、羽布団の羽のような触れ方だった。……とりあえず布団返せ。
「はぐらかすのかよ」
「まさか」
はがされた羽布団の代わりに、ヨハンがダイブしてくる。
「俺はいったいどれだけ十代が好きなんだろうってこと。キスしても、……セックスしても、ぜんぜん足りないんだもんな!」
*
4の日だからこれはもう本番しかないと思っていたのですが、
時間的に間に合いそうもないのと長くなりそうなので
(あとからあとからネタが出てくるんです。どんだけ濃密)
結局事後だけになってしまいました。
期待していた方には本当に申し訳ありません。(081024)