喩えてなどいない
俺たちはよくにていると言われるけれど、そんなことはないと思う。
「なんかさ、俺」
「ん?」
購買で買ったフライドポテトを分け合いながら俺とヨハンはカードのカタログを眺めていた。1ページめくるたびに手を拭いて、という面倒な作業もちっとも苦じゃない。要は、フライドポテトも食べたいしカタログも見たいのだ。
「十代みたいだ、って言われるのってどうかと思うんだよな」
「何で?」
外側はカリっと、中はふんわりのフライドポテトはさすがトメさんの作だ。たまにドローパンの具にもなるらしい。
そんなフライドポテトを俺と同じタイミングで袋から取り出しながら、ヨハンは不本意そうに眉をしかめた。
「だってさ、それって、俺と十代がセットみたいじゃん。どっちでも代わりがきくみたいな感じでヤなんだよなー。俺は俺、十代は十代、代わりなんかいるわけないのに」
そこまで言い切って、一口にポテトを食べきる。
俺はそれを聞きながら食べていて、ちょうど同じタイミングに食べ終わった。
話半分にしてしまったのは、ヨハンの言ってることが当然のことだからだ。
俺は俺だし、ヨハンはヨハンだし。
俺みたいだ、ヨハンみたいだ、なんてたとえられても正直困る。
だって俺、ヨハンが何考えてるのかとかあんまりわかんねぇし。
ああでも、今だけはわかる。
「十代」
「ヨハン」
袋に入っていた、フライドポテトの最後の一本。同じタイミングで指を小さな袋に入れたからか、互いの指を掴んでしまっている現状。
「どっちが食べる?」
「食べた方がカタログを返しに行く、ってのでどうだ?」
「そうだなぁ」
フライドポテトを食べて、図書館までの道のりを往復するか……どうしてか俺もヨハンもなかなか図書館にたどり着けない……、その究極の選択に、俺たちは互いに頭を悩ませるのだった。
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拍手御礼SSでした(081102)