みんなきみをすきだといい
「好かれるのときらわれるのだったら、やっぱり好かれるほうがいいよな」
いつになく難しい顔をしながら告げてくるヨハンに、俺は手にしていたカードを伏せつつ「へ?」と首をかしげた。
いつものように飽きることなくデュエルをしている、そんな最中。
ヨハンの呟きはそれまでのデュエルになんの脈絡もないから俺はやっぱり首をかしげるしかなかったのだ。
「でも、好かれるのはいいけど、それにしたってライバル多すぎるよなぁ」
はぁ、とため息をついたヨハンは自分のターンを宣言して、目を輝かせた。……アメジスト・キャットかサファイア・ペガサスが来たなこりゃ。
「俺は、アメジスト・キャットを攻撃表示で召喚! で、もちろん」
『アメジスト・ネイル、よね』
「やっぱり」
現れたアメジスト・キャットがきりっとこちらを見て楽しそうに爪を輝かせている。……俺は怖いんだけどな。
『ごめんなさい十代。あたしは十代のこと好きだけど、これ、デュエルだから』
そんなこと言ったって、痛いものは痛い……と思う、気持ち的に。
「え!?」
俺とアメジスト・キャットの会話を聞いていたヨハンがなぜかびくっとした。
「どうかしたのか、ヨハン?」
「え、いや。別に。と、とにかくアメジストキャットの攻撃力を半分にして、十代にダイレクトアタック!」
とたんに、顔に爪で鋭い痛みが描かれる。たぶん爪痕も出てる。残らないとはいえ、痛そうだぞ…。
『ヨハン、どうしたの?』
「いや、ここにもライバルがいたかーって思って」
ヨハンの呟きに俺とアメジスト・キャットは顔を見合わせた。
再び首をかしげた俺とは違って、アメジスト・キャットは何かを察したらしい。くすっと笑い声がきこえる。
「ヨハン、それだけみんな、十代が好きってことよ? 素敵なことじゃない」
くすくす笑うアメジスト・キャットと、困ったような顔で頭をかくヨハン、そして、何が何だかぜんぜんわからない俺と。
とりあえず、ひりひりするような気がする顔を冷やしたいなぁ。
「ヨハンー、ターン終わりか?」
「あ、ああ」
……なんでヨハン、がっくりしてんだ? アメジスト・キャットは笑ってるし。
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拍手御礼SSでした(081102)