黄金時代
「……今日こそは、俺が!」
「いや、今日も俺があててやるぜ!」
購買部の一画で、俺とヨハンはワゴンのこちらがわとあちらがわで火花を散らす。
「アニキー。さっさと選んでほしいっす」
「そうだドン。みんなアニキとヨハンの迫力に負けてワゴンに近寄れないザウルス」
背後から翔と剣山が不満の声をあげているけど、俺はそれどころじゃなかった。
「今週は2勝2敗1引き分け。今日こそ勝つぜ!」
「いやぁ、今日も俺が勝たせて貰う。いつまでももらってばかりじゃあ悪いからなっ!」
がしっと、目の前のワゴンから目的のモノをつかみ取る。
「ハイ、二人ともドローパン1つずつだね」
トメさんがにこやかに俺たちの肩を叩いた。
「ちぇ、おにぎりパンだ」
残念ながら黄金の卵パンをひくことはできなかった。しかも、おにぎりかぁ。
「おおっ、伊勢エビパン」
ヨハンも結局は引けなかったらしい。でも、伊勢エビパンだと!?
「なに!? ヨハン……!」
「おう、交換しようぜ、十代!」
俺たちは互いの好物のパンを引き当てたので、そのまま交換した。
「でもさ、今日は誰が黄金の卵パンあてたんだろうな?」
「誰だろうなぁ。……ちぇ、今週は2勝2敗2引き分けか」
ぼやきながら、伊勢エビパンにかじりつく。うん、んまい。
「まぁ、これでも十分楽しいしうまいから、いっか!」
ヨハンもおにぎりパンにかじりついて幸せそうだ。
結局、黄金の卵パンを引けなくても、俺は十分に楽しいのだった。
黄金の卵パンを目指しながら笑い合う、これって青春だよな。
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拍手御礼SSでした(081102)